家は、暮らしを囲うだけのものではありません

家は、雨や風、暑さや寒さから家族を守り、安心して過ごすための場所です。
けれども、家の役割は、暮らしを外の世界から切り離し、室内に閉じ込めることだけではないと私たちは考えています。
窓の向こうに季節を感じること。
庭や土に触れ、自分の手で暮らしを整えること。
家族や近所の人と、できたものや時間を分かち合うこと。
家は、自然と人、人と人、そして過去と未来の間に、さまざまな関係を育てる場所でもあります。

共生のある暮らしとは、山の中に住むことや、すべてを自給することではありません。
自分たちの暮らしが何によって支えられているのかを感じながら、それぞれの家族に合った方法で、自然や地域との関係を育てていくことです。
季節の小さな変化に気づく
朝、窓から差し込む光の角度。
風の温度や匂い。
屋根や軒を打つ雨の音。
庭の木々の色や、訪れる鳥や虫たち。

自然は、一年を通して少しずつ変化しています。
家の中にいながら、そうした変化に気づくことができると、暮らしの中に時間の流れが戻ってきます。
春になったから窓を開ける。
夏の日差しを木陰や軒で避ける。
秋には庭の実りを楽しむ。
冬には火の暖かさを囲む。
自然とつながる暮らしとは、自然の厳しさを我慢することではありません。
家の基本的な性能によって快適さと安心を整えたうえで、光や風、木や火、庭や季節とのつながりを、無理のない形で暮らしに取り入れることです。

気候や季節に気づき、それに合わせて暮らし方を少し変えていく。
その小さな応答の積み重ねが、自然とともにある暮らしをつくります。
暮らしのつくり手になる
現代の暮らしでは、必要なものの多くを、完成した商品やサービスとして手に入れることができます。
それは便利である一方、暮らしを自分の手でつくる機会を、少なくしているのかもしれません。
庭の草を刈る。
野菜や草花を育てる。
薪を運び、火を焚く。
木の床や建具を手入れする。
壊れたものを直し、道具を長く使う。

すべてを自分でする必要はありません。
できることを、できる範囲で暮らしの中に取り戻すことが大切です。
手を動かすことで、木や土、火や水の性質が少しずつ分かるようになります。
うまくいかないことや、思いどおりにならないこともあります。それでも、自分で考え、試し、手をかけたものには、買ったものとは違う愛着が生まれます。
家を与えられたまま使う人ではなく、暮らしながら家や庭を育てていく人になる。
住まい手自身が暮らしのつくり手になることも、共生のある暮らしの大切な姿です。

家とともに、時間を重ねる
新しい家は、完成したときがいちばん美しく、時間がたつほど価値が失われていくものなのでしょうか。
私たちは、そうではないと考えています。
木の色が少しずつ深まり、床についた傷や柱の跡が、家族の記憶になっていく。
庭の木が育ち、窓から見える景色が変わっていく。
子どもの成長や家族の変化に合わせて、部屋の使い方を変え、必要なところに手を加えていく。

家は、建てた時点ですべてが完成するものではありません。
そこに暮らす人とともに時間を重ね、少しずつその家らしい姿になっていきます。
古くなった部分を直し、使いにくくなったところをつくり変えながら、長く住み続ける。
傷や変化を一律に劣化と捉えるのではなく、暮らしの積み重ねとして受け止める。
家と住まい手が互いに育っていくことも、私たちが大切にしたい共生のあり方です。

恵みや時間を、誰かと分かち合う
共生は、人と自然だけの関係ではありません。
家族や友人、近所の人、地域のつくり手との関係も、暮らしを支える大切なつながりです。

庭で採れた野菜や果物を誰かに分ける。
軒下や土間で、近所の人と言葉を交わす。
家の手入れについて、つくり手に相談する。
子どもたちが、森や田畑、地域の仕事に触れる。
家の中だけですべてを完結させるのではなく、できたものや知恵、時間を少しずつ分かち合うことで、人と人との間に新しい関係が生まれます。

かつての地域にあった濃密なつながりを、そのまま取り戻す必要はありません。
互いの生活を尊重しながら、困ったときには支え合い、うれしいことは分かち合える。
現代の暮らしに合った、緩やかで心地よい関係を育てていくことが大切です。

無理なく、長く続けられること
共生のある暮らしは、特別な知識や強い意志を持った人だけのものではありません。
田畑を持ち、何でも自分でつくる暮らしだけが、自然と共生する暮らしなのでもありません。
庭に一本の木を植える。
季節の光や風を感じる。
身近な木でつくられたものを選ぶ。
壊れたものをすぐに捨てず、直して使う。
暮らしの中で生まれたものを、土へ返す。
できることは、家族や住む場所によって異なります。
大切なのは、決められた暮らし方に自分を合わせることではなく、自分たちにとって心地よく、無理なく続けられる自然との関わり方を見つけることです。

便利さをすべて手放す必要も、不便を我慢する必要もありません。
現代の技術による安全性や快適性を土台にしながら、自然との接点を失わない。
そのバランスを一つひとつの家族と一緒に考えることが、坂元植林の家の家づくりです。

暮らしながら、関係を育てていく
庭も、家も、地域との関係も、住み始めた日に完成するものではありません。
暮らしながら気づき、手を入れ、時には失敗し、またつくり直していくものです。
自然を一方的に利用するのでもなく、自然に合わせて人が我慢するのでもない。
家族だけで閉じるのでもなく、地域との関係に縛られるのでもない。
自然と人、人と人が、互いに支え合いながら、それぞれにとってよりよい関係を探し続けていく。
共生のある暮らしとは、完成された一つの暮らし方を選ぶことではありません。
日々の営みを通して、家と庭、自然と人、家族と地域の関係を、少しずつ育て続けることです。
そのための場所を、住まい手とともにつくっていくこと。
それが、坂元植林の家が目指す「共生のある暮らし」です。









