さとのえと幸せな縁結びの物語

さとのえでの出会いとお二人に贈る表札づくりを振り返る

「さとのえ」で行われたまちコンで出会ったカップルが、今年1月にめでたくご結婚されました。坂元植林の家では、せっかくさとのえで紡いでいただいたお二人のご縁を大切にしたいと思い、ささやかながらではありますが、お二人に伐採していただいた杉でお二人のお宅の表札を制作し、ご贈呈いたしました。お二人の出会いから表札制作までの道のりを振り返りたいと思います。

さとのえでの出会い

2024年1月。さとのえで初めて開催される里山暮らし×まちコンには20名ほどの方が参加されました。まちコンは、柴田町里山ビジネス振興協議会という柴田町の里山を盛り上げようという事業者が集まる団体が主催のイベントです。あいにくの雨ではありましたが、さとのえでのお料理は大変盛り上がりました。里山らしい素朴な体験やお料理を協同してつくる体験に、それをさとのえという木の居心地のいい空間で行うことであまり肩に力が入らない出会いの場を演出できました。残念ながらお二人で写っている写真はなかったのですが、水面下でしっかりと結ばれていたんですね。

それからほどなくして、坂元植林の家にお二人がお付き合いされていると嬉しいご連絡がありました。私たちもさとのえがそういった場を提供できたことに大変うれしく感じました。

お二人は次のデートの場として、さとのえで行われる映画上映会を選んでくださいました。上映されたのは「人生フルーツ」という建築家のご夫妻を描いたドキュメンタリー映画です。お二人が寄り添って暮らしていく様子を描いた心温まるストーリーです。さとのえの温かみもあいまって、ゆったりとしたお時間をご提供できたのではないかと思います。

ご入籍と伐採式

そして、1年後お二人はめでたくご入籍されました。お二人は「さとのえ」で出会ったことを考え、柴田町役場にて婚姻届を提出されるとのこと。私たちも、せっかくさとのえで結んでいただいたご縁ですから、ぜひお祝いしたいと考え、伐採式にご参加いただくことをご提案しました。

当日は、お二人と奥様のご両親とで伐採式を執り行いました。

伐倒前の儀式の後、弊社の林業部社員の伐採をご覧いただきました。しーんと静まり返った森林に響く伐倒の音。入籍という特別な日にふさわしい神聖な空気を醸し出します。

伐採式でお渡しした丸太の板は、家宝になったとまでおっしゃっていただけました。人生の大事な記念日に特別な機会をご提供できたこと、弊社にとっても特別な経験となりました。

さとのえで出会ったお二人が、さとのえで大切な日を過ごしてくださいました。さとのえの温かな空間が、お二人の門出を祝福しているようでした。さとのえはモデルハウスではありますが、お二人のような柔和で純朴な、そんな素敵なご家族の暮らしのためにつくられた家のように感じました。

表札づくり~製材~

1月に伐り出した木は、ご夫妻とご相談をし、弊社の木材課で木材の適材適所を検討した結果、新しいお二人の住まいの「表札」にすることになりました。ここから伐採した木が表札になるまでの道のりをご紹介したいと思います。

伐採した木材はまず製材作業となります。製材作業では、「台車」と呼ばれる送材車のついたのこ盤を使って木を挽いていきます。

今回は表札にすることが決まったため、表札の大きさよりも少し大きめに切り分けていきます。乾燥の過程で木材は収縮するからです。

ここから約半年ほど、自然乾燥させました。自然乾燥は、人工乾燥に比べて時間を要する一方、木本来の品質・強度・調湿性・風合いを保つことができます。品質の良い木材にするために少しの間我慢が必要です。最終的な乾燥度合いは含水率10.7%となりました。JAS規格なども踏まえると、一般に含水率15%以下が好ましいとされています。

乾燥の後、幅決め製材となります。今回は寸法長さ180mmx幅75mmx厚み30mm仕上がりで確定しました。幅と厚みまで木材課で加工し、仕上げの加工を大工班に引き渡します。

 

表札づくり~加工~

そして、最後は弊社の社員大工が仕上げます。

まずはプレーナー(かんな盤)。手押しのかんな盤で木材の基準面(平面)を出し、最初の一面をまっすぐで平らな面に整えた後、自動のかんな盤で自動送りして厚みを一定に揃えます。

手押しかんな盤。

 

下側に刃があり、上から押さえて削っています。

自動かんな盤。自動送りの機械に入れます。

幅広の木材のプレーナーがけ。上の刃で削り、厚みを一定に整えます。

プレーナーで木材が平らになり、厚さが均一となったところで、面の仕上げを行います。こちらのサンダーにかけることで、面が研磨され、すべすべになります。

プレーナーと比べてかなり速い速度で引き込まれていきます。

かつおぶしのような薄いかんなくずが出ます。

木材の最後の一面以外が整ったところで、表札の長さ(幅)にカットしていきます。

横幅の長さでカット。

表札の大きさにカットされた木材は、最後のカットされた断面部分のやすりがけと面取りの仕上げをして完成です。面取りとは角を削って落とすことで、面取りにより角が接触して怪我をするのを防いだり、美観を向上させたりする効果があります。均一に面取りができるよう、大工さんは面取り用のかんなも持っています。

面取り用のかんな。普通のかんなより一回り小さいです。

そうしてできあがった表札がこちら。

色は自然乾燥した杉の明るい色合いで、厚みをしっかりとって重厚感があり、いい仕上がりになりました。

伐採・製材・加工のフローを一通り追ってきましたが、それぞれの工程でそれぞれの職人が丹精をこめて技術を注ぎ込み、一つの製品ができあがっています。このようにいろいろな職人の手を介して作られる表札が、いろいろな人の思いによって支えられるお二人のご結婚の贈り物にできることは、何か感慨深いものがあります。

ご結婚されたお二人への贈り物

2025年の9月、お二人は坂元植林の家のイベント「森林散策と手打ち蕎麦振る舞い」にお越しくださいました。久しぶりにお会いしたお二人の様子はすっかり「家族」という感じで、ご入籍のときよりさらに柔らかな雰囲気を醸し出していました。

森林散策とお蕎麦の食事を終えたあと、記念の表札をプレゼントさせていただきました。

お二人のお申し出をいただき、表札に使わなかった部分の木材は、弊社の家づくりで活用することになりました。お申し出の中で、「スギの木にとって幸せ」を考えてというお言葉をいただきました。私たちは森づくりと家づくりにおいて循環を大切に考えています。森からのめぐみを余すことなく使うこともこれまた森づくりにおいて大切な考え方です。お二人からこのようなお考えをいただけることは大変嬉しいことです。モデルハウス「さとのえ」がそうした価値観を持ったお二人を引き合わせてくれたと考えると、またこれも大変誇らしいことです。木材は弊社の家づくりで大切に使わせていただきます。

表札をお渡しして、お二人と私たち坂元植林の家との1年半の物語が一段落となりました。お二人は、近々、結婚式を挙げられるそうです。末永いお幸せをお祈りしております。ぜひ、またさとのえのイベントにも遊びに来ていただけたら嬉しいです。

そして、来る11/8(土)に、1年ぶりにモデルハウス「さとのえ」にて、「里山暮らし×まちコン」が開催されます。「さとのえ」はまた次のご縁を繋いでいきます。