ご縁をたどり、土地と出会う。家族がのびのび暮らす木の家

仙台市太白区木村ファミリー

明るいリビングを、子どもたちがぐるぐると走っていきます。

キッチンからホールへ。そこから洗面脱衣室を抜け、またリビングへ。もうひとつのルートでは、吹き抜けの下を通って階段のまわりを一周することもできます。

「サーキットみたいになってるんで(笑)。雨の日でも走り回れるので、子どもたちは発散できています」


そう笑いながら語るのは、木村啓太さん。奥様の愛美さんも2人のお子さんを見守りながら笑います。

大きな窓から光が入り、吹き抜けを介して一階と二階がゆるやかにつながる木村様邸。ご夫妻が思い描いていたのは、明るく開放的な場所に、自然と家族が集まる住まいでした。

家づくりの途中では、一度決まりかけていた土地を白紙に戻し、土地探しからやり直したこともありました。

そこから出会った、見晴らしのよい仙台市太白区の土地。そして、暮らして二年ほどが経った今、少しずつ色を深めている無垢の木。

家を探し、土地を探し、家族で迷いながらつくった住まいを訪ね、木村様ご夫妻に家づくりを振り返っていただきました。

二人とも、木のある家で育った

木村様ご夫妻が家づくりを具体的に考え始めたのは、二人目のお子さんが生まれ、それまで暮らしていた賃貸住宅を手狭に感じるようになったことがきっかけでした。

木の家を選んだことには、ご夫妻それぞれの原体験があります。

愛美さんのご実家は、福島県を中心に木の家づくりを行う四季工房さんで建築したお宅。啓太さんのご実家も、木をふんだんに使った住まいでした。

「どっちの実家も木を使った家だったので。住むなら、何にも木がない家よりは、木があるほうがいいよね、というのはありました。住み慣れた『木のある家』だったんですよね」

特別なものに憧れたというより、自分たちが育ってきた感覚の延長に、木の家があったのかもしれません。

家づくりを考えるなかで、岐阜県の工務店「ひだまりほーむ」のInstagramにも目を留め、宮城県で家を建てることを相談。いくつかの地域工務店を紹介してもらい、そのなかの一社として坂元植林の家を知っていただきました。


そして実際に訪れた、モデルハウス「さとのえ」。

愛美さんは、そのときの感覚を今も覚えています。

「すごく気持ちがいいな、寝転がりたくなるなって思ったのを覚えています」

啓太さんは、実際に「ここ、寝転がってみてもいいですか?」と尋ね、その場で床に寝転がったそうです。

木の床に身体をあずけて感じる、温度や手触り。

説明を聞くより先に、身体のほうが「ここは気持ちいい」と感じていたようです。

「好きでやっている人なんだな」と思った

家づくりでは、建物と同じくらい「誰とつくるか」も、ご夫妻にとって大切なことでした。

初めて「さとのえ」を訪れたとき、担当者から出された少し変わったお茶のことも印象に残っているといいます。

愛美さんは、それまでにもいくつもの住宅会社を訪れていました。

「もちろんすごく印象のいい人もいれば、すごくギラギラした人もいて。そのなかで、なんかこの人は、このお茶とかも含めて、本当に好きで暮らしのことをやってるんだなって。仕事感があんまりなかったのを覚えています」

啓太さんも、「自然体な感じだった」と振り返ります。

その第一印象は、家づくりが進んでも変わらなかったそうです。

気になることをひとつ尋ねると、その答えだけではなく、その先の選択肢まで返ってくる。

「一個聞くと、一個教えてくれるプラス、おまけで二個ぐらい教えてくれる感じでした。『こういうこともできますよ』って。専門的な知識があって、頼もしかったです」

床板を歩いたときに感じた、ごくわずかな感触の違いについて尋ねたときにも、板の厚さとの関係を説明したうえで、別のつくり方まで提案されたことが印象に残っているそうです。

「気になったことは、どんどん聞いていいんだなと思いました。家づくりは一緒につくるパートナーになるわけなので、金額も大事だけど、『人』もすごく大事なんだなって、建ててみて感じました」

一度決まりかけた土地を、白紙に戻す

実は木村様の家づくりは、最初から現在の土地で進んでいたわけではありません。

当初は大河原町周辺で土地を検討し、候補地を決め、プランまで作成していました。

けれど家づくりを進めるうちに、ご夫妻の働き方、ご主人の通勤、お子さんたちのことなど、これからの暮らしについて改めて話し合うようになります。

「大河原だと、主人の通勤にはやっぱり遠いよね、となって。夫婦のなかでも、そこをちゃんと話し合えていなかったんだと思います」

一度は「ここに建てる」ところまで進んだ計画です。

それを白紙に戻し、「土地探しから、もう一度やり直したい」と伝えることには、ためらいもありました。

啓太さんは、そのときのやりとりをよく覚えています。

「『もう建てます』みたいなところから、『すみません、ちょっとやり直しで……』っていう、すごく言いづらいお願いだったんです。でも嫌な顔ひとつせず、『あ、はい。分かりました』という感じで対応していただいて。あれは助かりました」

家づくりは、途中で考えが変わることがあります。
家族の状況も、仕事も、子どもの成長も、これから暮らす場所への考え方も変化していきます。

大切なのは、最初に決めた計画を守ることではなく、これからの暮らしにとって何が大切なのかを、その都度確かめ直すことなのかもしれません。

木村様ご家族の家づくりは、ここからもう一度始まりました。

夜な夜な土地を探して、見つけた場所

現在の土地を見つけたのは、愛美さんでした。

土地探しをしていた時期、夜になると不動産情報を見ることが習慣になっていたそうです。

「その日も夜な夜な見ていたら、『昨日までなかった、こんな土地がある!』って。それで、その場で問い合わせボタンをピッと押しました(笑)」

結果的に、その問い合わせが一番手になりました。

土地はきれいな四角形で、家を建てるにはちょうどよさそうな大きさ。そして何より、愛美さんが気になったのが敷地の高低差でした。

以前暮らしていたアパートも二階からの見晴らしがよく、新しい家でも、窓の向こうがすぐ隣家の窓になるような環境ではなく、少し視線の抜ける場所がいいと思っていたそうです。

「そんな場所、なかなかないよなと思っていたんですけど、意外とあった。見晴らしもよさそうだなと思いました」

一方、敷地には既存の擁壁がありました。

本当にそのまま建てられるのか。土地の価格以外に、大きな追加費用がかからないのか。当初は「200万円ほど追加になる可能性もある」と聞き、特に金銭面では心配があったといいます。

土地は、図面や不動産情報だけでは判断できません。
坂元植林の家でも現地を確認し、建築の可能性を検討。そのうえで、木村様ご夫妻は購入を決めました。

一度土地探しをやり直したあと、不思議なくらい物事は順調に進んでいったそうです。

明るい場所に、みんなが集まれるように

新しい家で、どんな暮らしがしたいか。

啓太さんのなかには、比較的はっきりしたイメージがありました。

「明るくて、開放感のあるところで、みんなで集まれたらいいなと思っていました」

そこから、大きな窓や吹き抜けのある現在の住まいが形になっていきました。

一階の中央にはキッチン。
その周囲を、リビング・ダイニング、ホール、洗面脱衣室、サンルームがつながり、家の中をぐるりと回ることのできる間取りです。

二階には寝室とトイレ、物置、将来二室に分けることのできる子ども室。その中央には吹き抜けがあり、大きな窓から入った光が一階まで届きます。

高低差のある土地だからこそ、二階の窓の先には遠くまで視線が抜けます。

実際に暮らしてみても、「明るい場所に家族が集まる」という当初の思いは、そのまま暮らしの風景になりました。

朝、家族で食卓を囲んでいると、窓の向こうに雀がやってくることがあります。

「『雀が来た』って、子どもたちが窓の外を見ながらご飯を食べられるのも、いいなと思います」

大きな窓は、光を取り込むだけではありません。
外の景色や鳥の姿、季節や天気の変化まで、家族の日常に連れてきます。

「サーキットみたい」な家を、子どもたちが走る

この家を訪れると、もうひとつ気づくことがあります。
子どもたちが、とにかくよく動くことです。

リビングからキッチンへ。ホールを抜け、水まわりを通り、またリビングへ。

「サーキットみたいになってるんで(笑)」
啓太さんはそう表現します。

「雨の日でも走り回れるので、発散できています」

愛美さんも、
「生活しやすいというより、いろいろ走り回りやすい(笑)。でも、子どもたちが室内で窮屈にすることなく過ごせるのは、とてもいいなと思います」
と話してくださいました。

もちろん、暮らしてみて初めて分かったこともあります。

帰宅して、リビングを通らずにトイレや洗面へ行ける動線は、とても便利。一方で、場所によってはキッチンの横を通らなければ移動できず、「キッチンの向きや位置は、もう少し違う方法もあったかもしれない」と感じることもあるそうです。


住み始めれば、図面を見ていたころには分からなかったことも見えてきます。

家は完成した瞬間に答えが出るものではありません。
良かったところも、こうすればよかったと思うところも含めて、家族が暮らしながら住まいとの付き合い方を見つけていきます。

そんな率直な言葉もまた、「住まい手さん訪問記」で大切に残しておきたい、暮らしの実感です。

夏の光と、冬のあたたかさ

大きな窓と吹き抜けは、季節によって表情を変えます。

夏には、「少し明るすぎる」「暑くなりすぎる」と感じる日もあると愛美さん。

「そこは地球と付き合っていかなきゃいけないかな、と思っています(笑)」

一方で、暮らしてみて意外だったのは冬でした。

「思っていたより暖かかったです。暖房を切っていても、午後に日の光が入ってくると暖かかったりして。いい意味でのギャップもありました」

太陽の高さも、光の入り方も、外の気温も、一年を通して変わっていきます。

自然を完全に遮断するのではなく、ときには強さも感じながら、その恵みも受け取って暮らしていく。

窓の向こうの景色だけではなく、光や熱まで含めて、この土地の環境と付き合う暮らしが始まっています。

白かった木が、少しずつ家族の色になる

木村様ご夫妻に、木の家で暮らしてみて感じることを尋ねると、愛美さんが最初に挙げたのは床でした。

「やっぱり、素足で歩いたときの感じが賃貸のときとは全然違います」

二人とも木の家で育ち、その感触を知っています。

賃貸住宅では叶わなかった、無垢の床を素足で歩く暮らし。それが戻ってきたことを実感しているそうです。

一方、啓太さんが面白いと感じているのは、木の変化です。

建築中の家を見学したとき、無垢の木が思った以上に白く見えたため、スタッフに尋ねたことがありました。

塗装などで色をつけていないから、最初は白いこと。そして、暮らすうちに少しずつ色が変わっていくことを聞いたそうです。

「建ったときは、眩しいくらい白かったんですけど、住んでいるうちにちゃんと色がついてきて、いい塩梅になってきたんですよね」

そして、こんなふうに例えてくれました。

「革の財布が馴染んでいくみたいな感じです。使っていくうちに、どんどんいい塩梅になっていく。これからどんなふうになるのかな、と思っています」

無垢の床につく傷も、最初こそ気になったそうですが、ほどなく気にならなくなりました。

新品の美しさを保ち続けるのではなく、光を受け、傷がつき、色を深めながら、その家だけの表情になっていく。

愛美さんのご実家の木も、長い年月を経てすっかり濃い色になっているそうです。

「うちもあと20年ぐらいしたら、こうなっていくのかな」

その変化まで含めて、木村様ご家族の家はこれから育っていきます。

家を建てる前に、「何を大事にしたいか」を話しておく

これから家づくりをする人に伝えたいことを尋ねると、啓太さんはまず、「家を建てる目的を家族で話しておくこと」と答えました。

そして、愛美さんからは、このようなお答えをいただきました。

「どうして家を建てるのか。どこに住みたいのか。間取りなのか、土地なのか、場所なのか。何の優先度が高いのか。そこをきちんと話し合ってから進めたほうがいいと思います」

木村様ご夫妻自身、一度決まりかけた土地を白紙に戻しました。

だからこそ、家づくりを終えた今、最初に家族で話しておくことの大切さを実感しています。

同時に、すべてを事前に知ることはできません。

啓太さんはもうひとつ、

「気になることがあったら、遠慮しないでどんどん聞いてみること」

を挙げます。

大きな買い物だからこそ、分からないことをそのままにしない。

そして、自分たちの疑問を気兼ねなく投げかけられる相手かどうか。

家を建て終えて振り返ると、会社の名前や金額だけではなく、長い時間を一緒に過ごす「人」との相性も、家づくりの大切な一部だったと感じているそうです。

「家を買う」より、「家づくりをした」という感覚

最後に、坂元植林の家での家づくり全体を振り返っていただきました。

啓太さんから返ってきたのは、私たちにとっても印象深い言葉でした。

地鎮祭を行い、家を建てる土地と向き合う。

設計者や職人と話しながら、一つひとつ決めていく。

木が組まれ、少しずつ家になっていく時間を過ごし、ようやくそこで暮らし始める。

「日本の家づくりって、こういうふうにずっと行われてきたんだろうな、と思いました」

そして、こう続けます。

「建売を買って入っておしまい、という感じではなくて。家を『買う』というより、『家づくりをする』という体験までさせてもらった、という感じがします」

家は、建てて終わりではありません。

真っ白だった木は少しずつ色づき、床には家族が暮らした跡が残っていきます。

子どもたちは今日も家の中を走り、窓の外に雀を見つけます。

やがて子ども室を分ける日が来て、暮らし方も変わっていくでしょう。

土地を探し直したことも、迷ったことも、地鎮祭の日も、家族で交わしたたくさんの会話も、そのすべてが今の暮らしにつながっています。

完成した家を受け取ることだけではなく、家が生まれる時間に家族自身が参加すること。

そして完成したあとも、木の変化と家族の変化を重ねながら、少しずつ自分たちの家にしていくこと。

木村様ご家族の住まいを訪ねていると、「家づくり」という言葉には、本来そんな長い時間が含まれているのだと、あらためて感じます。

書いた人

坂元植林の家 編集部

坂元植林の家 編集部

林業会社を母体とし、森林経営から木材加工、木造住宅の設計施工まで一貫して取り組む工務店として、森林・林業・木造建築・地域の暮らしに関する実務に基づいた情報を発信しています。