【漢字探訪】熾火について、思索に耽る

漢字探訪 ~熾火~

今回は、住まいと漢字について省察する旅に
みなさんをお連れしたいと思います。

今回のテーマは「おきび」です。
みなさんは、「おきび」って漢字で書けますか?


「おきび」って漢字で書けますか?

ペチカの「おきび」

もうすぐ寒い冬が明け、春になります。

そうはいってもまだ午前中は、
寒さが残りますので、
さとのえではペチカ(暖炉)を焚いています。

もう少しすれば、すっかり暖かい季節になり、
火を焚く必要もなくなってくることでしょう。

ペチカは、薪ストーブの炉内で薪を燃やし、
その熱をレンガの煙道内部に蓄えていくことで、
煙道が温まりきれば
薪を燃やさずとも長時間にわたって
部屋を輻射的に暖めてくれる仕組みです。

煙道が温まりきれば、
炉内に新しい薪を投下せずに、
「おきび」にしておきます。

キャンプでの調理や焚き火でも
最初は炎をあげてメラメラ燃やしますが、
薪や炭が真っ赤になっていく、
この「おきび」の状態に持っていきますよね。

ここで、読者のみなさんに質問ですが、
「おきび」と聞いて、パッと漢字が思い浮かびますか?


答え合わせ

答え合わせをする前に、
実は私が間違えて理解していた話をしましょう。

私は暖かい地域で生まれ育ったので、
薪ストーブのようなものが身近になく、
キャンプファンでもなかったので、
火の扱いについてそこまで慣れたものではありませんでした。

薪や炭が真っ赤に燃え静かに熱を発する状態を
「おきび」ということも、
恥ずかしながら私は知りませんでした。

東北に来て初めての冬、
薪ストーブの火は「おきび」にしていき、
そうなると火が長く持つことを教わりました。

そんな私ですから、
「おきび」という言葉を初めてきいたとき、
火を置いておくから「置き火」だと思っていました。

「置き火」だと思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
残念ながら、不正解です。

漢字マスターとして、間違えて理解していたことは面目ないです。


答え合わせをしましょう。

正解は、

「熾火」

です。

熾火

火へんに、つくりは識や職と同じ「音」と「戈」で「熾」。
なんだか格好良いですね。

読み方は訓読みで「さかん、おこす、おき」
音読みで「シ」

熾火以外に、「熾烈(しれつ)」といった熟語が
知られているのではないでしょうか。
その戦いは熾烈を極めた。とか言いますよね。

「さかん」という読みからも分かるように、
火の勢いが盛んなさまを表す漢字です。

「熾火」も
薪や炭が真っ赤に輝きながら熱を放つ、
盛んに燃える様子を表した熟語なのですね。

ほかに、「燠火」と書くこともあるようです。

熾火について知る

漢字の話はさておき、せっかくなので
熾火についてもう少し詳しく知りましょう。
こちらの記事を参照しました。

>>焚き火の最終形態「熾火」を極める|数値でわかる火加減と安全術

熾火は、
薪や炭が真っ赤に輝きながら遠赤外線を放ち、
煙を最小限に抑えつつ安定した熱を
供給してくれる状態のことをいいます。

燃え上がる炎が主体の可燃反応とは違い、
熾火は遠赤外線を大量に発し続ける
固体燃焼段階だそうです。

調理のしやすさ、温度の高さ、
煙が出ない、燃費、安全性の点で
優れています。

ちなみに、薪の違いで燃焼時間に差があり、
針葉樹の薪はすぐ火がつきますが、短時間で燃え尽きてしまいます。

一方、広葉樹の薪は火がつきづらいですが、火力が持続します。

そして、炭はさらに着火までに時間がかかりますが、高温度、長時間の熾火が期待できます。

一見穏やかに燃えている熾火ですが、
先述の通り、高温ですので、お子さんが間違って触って火傷しないように気を付けてください。

また、鎮火の際は窒息消火が安全で再利用しやすくおすすめです。
水をかけて消火すると、炭が使えなくなってしまいます。


熾火で焼き芋づくり

先日、ペチカの熾火で、焼き芋を作ってみました。

サツマイモとジャガイモで作ってみましたが、
とてもおいしくできました。

作り方は簡単です。

まず芋を洗い、

濡らしたキッチンペーパーにくるみ

そのうえからアルミホイルで包みます。

それを熾火のそばに置き、45分~60分くらい置いておきます。

あとは時間が来たら、開けるだけ。

簡単ですよね。

ジャガイモは外側が少し焦げてしまいましたが、
中はホクホクで上手に焼けました!
(私は香ばしい香りが食欲をそそるジャガイモが好みでした。)

バターと塩胡椒でいただきました。


熾火について、思索に耽る

熾火の由来の話

さて、漢字の話に戻りましょう。

元々中国で「熾(シ)」という漢字は火が激しく盛んに燃える様子を表していたわけですが、
なぜその「熾(シ)」に「おき」という訓が当てられたのでしょうか。

それを知るために、なぜ火勢が強くて赤く熱した炭火のことを「おき」というのか、
由来をネットで調べてみました。

しかし、
手の上に置いた火をおきびといった説。
起こした火がおきびになった説。
諸説あって、定かではなさそうです。

「熾(シ)」には「おこ(す)」という訓も当てられていますから、
元々起こすというニュアンスに近かったのかな、と考えましたが、
現代では、火をおこすときには、「火起こし」と「起」が使われます。
火を発生させる意味での「起こす」とはやはり明確に区別がありそうです。

火を発生させる意味での「おこし」と
薪や炭が真っ赤に輝きながら盛んに燃える意味での「おこし(おき)」とで
由来は近そうなのに、明確に区別されているのが、面白いと感じます。
このあたりが、漢字マスターの浪漫心をくすぐります。


「熾火」のような人間を目指す

熾火について調べていたら、
この「熾火」という単語が好きだという方やブランド名・ハンドルネームにしている方が散見されることに気づきました。

熾火は生活に与えてくれる恩恵の大きさもさることながら、
一見燃え尽きているように見えてはいるが、未だ内面に熱を秘めている状態も象徴的であります。

熾火の、そんな側面に憧憬の気持ちを抱くのでしょう。

私も、その気持ちがすごくよく理解できます。

熾火。改めていい言葉だな、と感じました。
昔の人々は、こうして、火をみながら、いろいろと思索に耽ったのかな。


さとのえと火

冒頭で、さとのえの熾火という切り口でお話しましたが、
モデルハウス「さとのえ」もまた、火と密接に関わる施設です。
冒頭にお話したペチカがまさに火を感じる設備ですよね。

さとのえは坂元植林の家が事業を行うなかで出す木質資源を有効活用して
エネルギーを得ている建築です。
例えば、坂元植林で出る間伐材や住宅の建築現場で出る木の端材を
ペチカや薪ボイラーの燃料としています。
化石燃料の力にほとんど頼らずに、自給自足をしているのです。

さとのえに来訪いただいたお客様に「じんわりあったかいですね」と言っていただくことがありますが、
エアコンや電気ヒーターは稼働していないんですよ、というと驚かれます。
こうした体験からも火の恩恵を身に染みて感じます。

一方で、直接火を囲んで火の魅力を感じることもあります。
さとのえで焚き火を囲むイベントやかまどご飯の体験はとても喜ばれます。

焚き火や囲炉裏の火を囲むと幻想的で、何時間でも火を見ていられるような気持ちになりますよね。
人間はこのようにして火と向き合ってきたんだろうと、そんな思索に耽る瞬間もあります。

さとのえで過ごす機会が多くなるにつれて、
火のありがたさや火の魅力を感じる機会も増えたように思います。

ぜひ、さとのえに遊びにいらしてください。

今シーズンは暖炉の季節が終わってしまうので、焼き芋づくりはもうやりませんが、
来シーズンのさとのえ自由見学日は、ペチカで焼き芋づくり体験ができるようにしたいと思います。

そして、冬の体験をきっかけに熾火について考えてきましたが、
夏に向けては「火起こし」についても何かさとのえで体験化できないか、試作中です。

先日、週末縄文人の縄さんという方の「火起こし」を見る機会をいただきました。
彼は、平日は都会でサラリーマン、週末は山にこもって縄文の暮らしを突き詰めるという
面白い活動をされている方です。
火起こしも試行錯誤の末に、森の素材でゼロからできるようになったそうです。

さとのえでも、この火起こし体験ができるようになったら
面白いのではないか、と考え、個人で研究中です。
乞うご期待!